泥棒とのじぎく賞

泥棒とのじぎく賞

 

 

昔、中学生になるころ加納町にあるYMCAの前のマンションに引っ越ました。

そこは大家さんがなぜそうしてくれたかはわかりませんがベランダを改造して勉強部屋にしてくれてました。

元々ベランダなので夏はものすごく暑く冬はすきま風で寒いそんな部屋を俺は自分の部屋にしていました。

 

こないだ神戸に帰ったときそのマンション見に行ったら昔は俺のとこだけだったのに全部の部屋がそうなっててびっくりしました。

3階に住んでた人

うちは2階でしたが3階には野球の清原選手のような角刈りでもなく坊主でもない剃り込みいれたヘアスタイルでフーテンの寅さんが着てるような黒いダボシャツって言うのかあのシャツに腹巻をして金色フレームで色つきの眼鏡をかけた人や恐い顔した人が何人もうろうろしてその人たちは若い衆でその親分がうちのマンションの3階に住んでました。

うちは家の近くで喫茶店をしていたため3階のひとたちもうちに珈琲を飲みによく来るお客さんでした。

その関係上なにか迷惑をかけられたりとかは一切ありませんでした。

マンションの下に車を1台置けるスペースがありそこにいつも親分の奥さんが車を止めてました。

黒いダボシャツの若い衆

俺が高校生になったころの話ですが あるとき昼寝をしてたら、ガンガン大きな音がするのでうるさいなぁとおもい小窓を開け下を見たら若い衆の黒いシャツのおっさんが恐い顔でこっちを見て見知らぬ車を指さして

「この車どこのやつか知らんか」

「いや知りません」

「ほんまか?」

「はい」

と言った瞬間車のボンネットを木刀で何度もガンガン叩きつけて車はあっというまにボコボコになりよく見たら両方のフェンダーミラーがぶたのしっぽのようにぐるぐる曲げられていました。

 

おっさんとは毎日のように会うので俺の顔みたらいつも怖い顔でニコニコしながら

「学校おもろいかぁ?」

「こないだ連れとったかわいい子彼女かぁ?」とか俺は嫌でしたがよく声をかけてきて半分友達みたいになってました。

時々喧嘩はこうやったら勝てるとか面白い話も立ち話でよくしてました。

 

「うわ~めちゃめちゃするなぁ 」そうおもって見てたら

「こらぁ~でてこんかぁこれ誰のくるまやぁ」おっさんが怒鳴りだしました。

 

すると前のYMCAの部屋の一室だとおもいますが窓が開いて上の方から驚いて真っ青なかおをした人が

それを見て「すみませんすぐいきます!!」

「オンドレどこに車とめとんじゃ」おっさんは木刀をグルグル振り回して威嚇していました。

ミラーがブタのしっぽみたいになって運転できるんかなと思いましたがそのボコボコの車はあっというまに逃げ去るようにいなくなりました。

 

(うう~んやっぱりやばいおっさんやなぁ)

 

オヤジとオカンに家引っ越したほうがええんちゃうのと言いましたが引っ越しませんでした。

 やばい住人の家と知らずに入った泥棒

それからしばらくして大家さんが来て「最近裏のベランダ伝って泥棒に入られてる部屋が多いので注意してください」って言ってきました。

たしかにマンションの裏は暗い駐車場なので入りやすいよなぁと思ってました。

 

ある日深夜3時ごろだとおもうけど今度は玄関で怒鳴り声が聞こえてきました。

(なんやいったいやばいのぉ)

そう思いながら覗くと黒いシャツのおっさんが見えました。

恐る恐るドアを開けたら顔が腫れあがり血まみれのじゃがいもみたいになった人間が、長じゅばんのひものようなので手足をぐるぐる巻きにされて足で蹴られてマンションの階段から転げ落ちてきました。

一瞬人間には見えずなんか人形のように見えました。

工工エエェ(゚▽゚ ;)ェエエ工工!?

「死んどんちゃうの?」

 

エライもん見てもた。こらやばい、そう思ってドアを閉めようとしたらおっさんが

「こいつ泥棒や いまから警察つきだすんや」

しかしあんだけボコボコにしたらいまなら完璧過剰防衛でおっさんも同時に逮捕されるかもしれませんね。

 

3階はその頃毎日のように賭場が開かれそれでいろんな人が出入りしてたのだと思います。

ただその日は休みの日で寝てるところに泥棒がそういう部屋とは知らずに入り捕まえられてボコボコににされたのだと思います。

怖ろしい事にタンスの引き出しで殴ったそうです。

(おっさん今度は車違って人間かいな なんでもボコボコやん ほんまむちゃくちゃするなぁ)

(もうおっさんと話すのやめよ)

俺はそう思いました。

 のじぎく賞

しばらくたったある日家に俺一人でいたらドアをどんどん叩く音がして何事かなと覗いたら色つきの眼鏡もかけてないサラリーマンみたいな恰好した今までで一番ニコニコした顔のオッサンが立ってました。

 

ドアを開けたら

「お~おまえおったんかぁお前に見せたろおもてなぁこれ見てくれや」

なんか賞状みたいなものを広げて俺に見せびらかしました。

「これ見てみぃ のじぎく賞や」

「のじぎく賞てなんですか?」

「お前知らんのか泥棒捕まえたから感謝状とのじぎく賞て表彰状や」

「あの泥棒有名な奴でなかなか捕まえられんかったらしいわ デコのとこ行くのは嫌やってんけどな」

「へぇ~ ほんますごいすねぇ」

「おれなぁ表彰状もらったん生まれて初めてやねん」いつもあんな恐い顔した人が別人のようになり子供のように

喜んで 照れくさそうに俺に表彰状見せてる姿を見て

(おっさんどないなっとんかな)と不思議におもいました。

 

※ のじぎく賞について

日常、見聞される身近な善行を、個人、団体、経歴等関係なく表彰し、明るく楽しい生活環境をつくりだすことを

目的とする兵庫県知事表彰です。

 

のじぎくは兵庫県の県の花でデコとは帽子のおでこのとこにマークがあるから警察のことデコスケと呼ぶらしいです(笑)

 

いまではそんなことは多分絶対にありえへんとおもうけど40年ぐらい昔は平和やったんやなとおもいます。

その後おっさん見かけなくなってオカンに聞いたら、なにをして捕まったかかはしらないけど長い間刑務所にいかないといけなくなったらしいと聞きました。

その後は知りません。

最後に

 

その若い衆の親分さんはもう今ではその職業ではないとおもいますがあるとき友達と食事をしてたら偶然家族でそこの店に来ていました。

親分さんは俺にニコっと笑って「お母さん元気か?」と一言言ってしらない間に伝票をもっていき奢ってくれたのを覚えてます。

あの時のおっさんとシバキ回されて血まみれでジャガイモみたいな顔にされた泥棒のこと思い出してほんま人の人生てなんやろっておもいますね。

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

No tags for this post.

メルマガ登録用バナー